アル・アインの文化的遺跡群とは
アル・アインの文化的遺跡群は、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国に位置する、人類の歴史を物語る貴重な遺産群です。2011年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。この遺産は「ハフィート」「ヒリ」「ビダ・ビント・サウード」そして「オアシス群」という4つの主要なエリアで構成されています。新石器時代から続く人類の定住の歴史と、厳しい砂漠環境で発展した独自の文化を今に伝えています。緑豊かなオアシスが点在することから「ガーデンシティ(庭園都市)」とも呼ばれています。
世界遺産登録とその基準
この遺跡群は、以下の3つの基準を満たしたことが評価され、世界遺産に登録されました。
- 登録基準(iii): 砂漠地帯における先史時代からの人類の定住文化の発展を示す、類い稀な証拠である点。
- 登録基準(iv): 青銅器時代や鉄器時代の墳墓や建造物、そして伝統的な灌漑システム「アフラージュ」が、人類の歴史における重要な段階を物語る顕著な見本である点。
- 登録基準(v): 厳しい環境下で持続可能な生活を可能にしたオアシスとアフラージュ・システムが、伝統的な土地利用の傑出した例証である点。
構成資産の紹介
アル・アインの文化的遺跡群は、それぞれ異なる時代の特徴を持つ4つのエリアから成り立っています。
ハフィートの墓地群
ハフィート山の麓に広がるこのエリアには、紀元前3200年から紀元前2500年頃(初期青銅器時代/ハフィート期)に築かれた約500基の石灰岩の墳墓が点在しています。ドーム型の特徴的な墳墓は、この地域の初期の社会構造や埋葬文化を理解する上で非常に重要です。
ヒリの考古遺産群
ヒリは、青銅器時代に栄えた集落跡で、復元された「ヒリの大円墳」が有名です。この地域では、現在知られている中で最古級のアフラージュ(灌漑用水路)の跡も発見されており、古代における高度な農業技術の存在を示しています。
ビダ・ビント・サウード
ハフィートとヒリの中間に位置する岩山で、鉄器時代に利用された大規模なアフラージュや、珍しい形状の墳墓が発見されています。この遺跡は、異なる時代の人々がこの地で生活を営んでいたことを示しています。
アル・アインのオアシス群
この遺産には6つの主要なオアシスが含まれており、古代から続く伝統的な灌漑システム「アフラージュ(単数形はファラジ)」によって支えられています。地下水路を用いて水を運び、ナツメヤシなどを栽培するこのシステムは、砂漠地帯での農業と定住を可能にした知恵の結晶であり、現在もその一部が利用されています。
遺産の価値と保全
アル・アインの文化的遺跡群は、数千年にわたり、人類が砂漠という厳しい環境に適応し、独自の文化を育んできた歴史を物語る貴重な遺産です。古代の灌漑技術や建築様式は、この地域の文化的発展を理解する上で欠かせない要素となっています。その歴史的・文化的価値を守るため、遺跡の保護活動とともに、持続可能な観光が推進されています。訪問者向けの教育プログラムなどを通じて、遺跡の重要性と伝統文化の継承が図られています。
基本情報
構成資産 | 主な特徴 |
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ハフィート | 初期青銅器時代の石造りの墳墓群 |
ヒリ | 青銅器時代の集落跡と最古級の灌漑システム |
ビダ・ビント・サウード | 鉄器時代の灌漑システムと墳墓 |
オアシス群 | 伝統的な灌漑システム「アフラージュ」で維持される緑豊かな農地 |