アレキパの歴史地区とは
アレキパの歴史地区(Historical Centre of the City of Arequipa)は、ペルー南部に位置する都市アレキパの中心部です。周辺の火山から産出される「シラー(sillar)」と呼ばれる白い火山岩で造られた建物が多いため、「白い街(La Ciudad Blanca)」として知られています。ヨーロッパの建築技術と土着の文化が融合した独特の景観が評価され、2000年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
登録基準
- 基準(i): 人類の創造的才能を表す傑作。シラーという素材の特性を最大限に活かし、彫りの深い装飾が施されたバロック様式の建築群は、地域の職人たちの卓越した技術と創造性を示しています。
- 基準(iv): 人類の歴史上において代表的な段階を示す、建築様式、建築技術または科学技術の総合体、あるいは景観の顕著な見本。スペイン植民地時代の建築様式が、ペルー土着の条件(素材、気候、文化)と融合し、「メスティーソ・バロック」とも呼ばれる独自の様式を生み出しました。これは、植民都市の発展段階を示す顕著な例です。
遺産の価値
アレキパの歴史地区の価値は、地域の自然素材を用いて、二つの異なる文化が見事に融合した独自の建築文化を創造した点にあります。
- シラー建築: 軽量で加工しやすい白い火山岩シラーを用いることで、地震が多いこの地域でも耐震性を持ちつつ、精緻な彫刻を施した美しい建築が可能になりました。街並みの白く輝く景観は、このシラーによって生み出されています。
- 文化の融合: スペインからもたらされたバロック様式に、アンデスの動植物や神話的なモチーフ(例えば、プーマの頭や仮面など)が装飾として取り入れられており、ヨーロッパとアンデス、二つの文化の対話が見られます。
概要
地理と歴史
ペルー南部のアンデス山脈の麓、標高約2,335mに位置します。1540年にスペイン人によって建設され、植民地時代にはペルー南部の政治・経済・文化の中心地として栄えました。頻繁な地震に見舞われながらも、その都度再建され、現在の美しい街並みが形成されました。
主要な建造物
歴史地区には、カテドラル(大聖堂)や多くの教会、修道院、そして美しい中庭を持つ邸宅が残されています。
建造物名 | 特徴 |
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サンタ・カタリナ修道院 | 「街の中の小さな街」とも呼ばれる広大な女子修道院。カラフルな壁と美しい中庭が印象的です。 |
アレキパ大聖堂(カテドラル) | アルマス広場に面して建つ壮大な大聖堂。シラーで造られ、地震による再建を繰り返してきました。 |
ラ・コンパニーア教会 | ファサード全体がメスティーソ・バロック様式の精緻な彫刻で覆われた、アレキパ建築の最高傑作の一つです。 |
アレキパの歴史地区は、自然の恵みと人間の創造力が融合して生まれた、世界に誇るべき美しい文化遺産です。
参考文献
UNESCO World Heritage Centre. “Historical Centre of the City of Arequipa”. https://whc.unesco.org/en/list/1016