スヴェシュタリのトラキア人の古墳とは
ブルガリア北東部に位置する「スヴェシュタリのトラキア人の古墳」は、紀元前3世紀前半に築かれた古代トラキアのゲタイ人の王墓と考えられています。この古墳は、ヘレニズムと現地のトラキア文化が融合した、他に類を見ない建築装飾で知られています。特に、墓室内の見事な浮き彫りが評価され、1985年に世界文化遺産に登録されました。
独自の建築と彫刻
この古墳の最大の特徴は、中央の墓室の壁を飾る10体の女性像の浮き彫りです。これらは「カリアティード(女神像柱)」と呼ばれ、上半身は女性、下半身はアカンサスの葉を様式化した植物の姿をしています。このような半人半植物の彫刻は、ヘレニズム世界においても類例がなく、トラキア人の独自の世界観や芸術性を示す傑作とされています。この彫刻は、トラキア建築とギリシャ建築の様式が見事に融合した例です。
世界遺産登録基準
- 登録基準(i):墓室を飾るカリアティードの浮き彫りは、その独創性と芸術性において人類の創造的才能を示す傑作です。
- 登録基準(iii):古代トラキア人、特にゲタイ人の文化、葬送儀礼、信仰を伝える類まれな証拠として高く評価されています。
スヴェシュタリの古墳は、同じくトラキア人の世界遺産であるカザンラクの古墳がフレスコ画を特徴とするのに対し、優れた彫刻装飾を特徴としています。この遺跡は、謎に包まれた古代トラキア文化の豊かさと独自性を今に伝える貴重な証人です。