概要
「ヴォーバンの要塞群」は、17世紀にフランス国王ルイ14世に仕えた軍事技術者、セバスティアン・ル・プレストル・ド・ヴォーバンが設計・建築した要塞のうち、代表的な12の施設群を指す世界遺産です。フランスの国境沿いに点在し、山岳部から海岸まで多様な地形でヴォーバンの築城術の粋を見ることができます。2008年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
世界遺産としての価値
この遺産は、以下の登録基準を満たしていると評価されています。
- 登録基準(i): ヴォーバンの軍事建築が、当時の築城技術の頂点であったこと。彼の設計は、機能性と合理性を追求した傑作とされています。
- 登録基準(ii): ヴォーバンの築城理論と実践が、ヨーロッパだけでなく、ロシアやアメリカ大陸など世界各地の軍事建築に大きな影響を与えたこと。
- 登録基準(iv): 17世紀から18世紀におけるヨーロッパの古典的な要塞建築の最も完成された姿を示す例証であること。
ヴォーバンの軍事建築
ヴォーバンの設計の特徴は、大砲による攻撃を前提とした防御システムにあります。地形を巧みに利用し、星形に稜堡(りょうほ)を配置することで死角をなくし、多層的な防御線を構築しました。彼の目的は単に堅固な要塞を造ることだけでなく、最小限の兵力で効率的に防衛し、国を守ることにありました。その合理的な設計思想は、近代の軍事技術の基礎を築いたとされています。
| 主な要塞の例 | 特徴 |
|---|---|
| ブザンソンの城塞 | 旧市街を見下ろす丘に築かれた城塞。ヴォーバン自身が最高傑作の一つと見なしていました。 |
| サン・マルタン・ド・レの城塞と城壁 | 大西洋に浮かぶレ島にあり、星形の城塞と街を囲む城壁が一体となっています。 |
| ヴィルフランシュ・ド・コンフランの城壁とリベリア要塞 | ピレネー山脈の渓谷に位置し、街の城壁と山頂の要塞が連携して防御する構造です。 |