パパハナウモクアケアとは
パパハナウモクアケアは、ハワイ諸島の北西部に広がる広大な海洋保護区で、2010年にユネスコの世界複合遺産に登録されました。海洋生態系の多様性と、ハワイ先住民にとっての文化的な重要性の両方が評価されています。その面積は約36万平方キロメートルに及びます。
この地域は、手つかずの自然が残り、7,000種以上の海洋生物が生息する生物多様性の宝庫であると同時に、ハワイ先住民の信仰や伝統において「生命が生まれ、死後に魂が還る場所」とされる聖地でもあります。
世界遺産登録基準
パパハナウモクアケアは、文化遺産と自然遺産の両方の価値が認められ、以下の5つの基準を満たして登録されました。
- (iii) 文化の証拠: 現存しない、あるいは稀な文化的伝統や文明の証拠を伝える遺産。
- (vi) 伝統との関連: 人類の歴史上重要な出来事や思想、信仰などと直接結びついている遺産。
- (viii) 地球の歴史: 地球の歴史の主要な段階(生命の記録、地形形成における重要な地質学的過程など)を示す顕著な見本。
- (ix) 生態系: 陸上・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化・発展において、進行中の重要な生態学的・生物学的過程を代表する顕著な見本。
- (x) 生物多様性: 生物多様性の保全のために最も重要かつ代表的な自然生息域。絶滅の恐れがある普遍的価値を持つ種が生息している場所も含む。
遺産の価値
豊かな自然環境と生態系
パパハナウモクアケアの海には、広大なサンゴ礁、環礁、浅瀬、深海といった多様な環境が広がっています。ここには7,000種以上の海洋生物が生息し、そのうちの4分の1は固有種であると考えられています。絶滅が危惧されるハワイモンクアザラシの大部分や、アオウミガメ(ハワイ語で「ホヌ」)の重要な繁殖地となっています。また、コアホウドリなど多くの海鳥にとっても重要な生息地です。
ハワイ先住民の文化的価値
この地域は、ハワイ先住民にとって創造神話に登場する祖先が眠る場所であり、生命の起源とされる神聖な場所です。古代の伝統的な航海術や儀式が今も受け継がれており、自然と文化が深く結びついた文化的景観を形成しています。
遺産の概要と保全
地理と環境
パパハナウモクアケアは、ハワイ諸島の主要8島から北西に約250キロメートル離れた場所から、約1,930キロメートルにわたって広がる島々や環礁、海域で構成されています。その大部分は人の手が加えられていない原始の自然環境が保たれています。
代表的な生物
この遺産を象徴する代表的な生物には以下のようなものがいます。
| 分類 | 代表的な生物・生態系 |
|---|---|
| 哺乳類 | ハワイモンクアザラシ、ハシナガイルカ |
| 爬虫類 | アオウミガメ(ホヌ) |
| 鳥類 | コアホウドリ、クロアシアホウドリ |
| 生態系 | サンゴ礁、海草藻場 |
厳格な保全活動
パパハナウモクアケアの貴重な自然と文化を守るため、立ち入りは厳しく制限されています。一般の観光目的での訪問は許可されておらず、アクセスできるのは科学調査、教育活動、そしてハワイ先住民による伝統的な文化的活動など、特別な許可を得た場合に限られます。このような厳格な管理体制によって、この類い稀な遺産は未来の世代へと引き継がれていきます。