カホキア・マウンド州立史跡とは
カホキア・マウンド州立史跡は、アメリカ合衆国イリノイ州に位置する、ミシシッピ文化の古代都市遺跡です。1982年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。この地には西暦600年頃から1400年頃にかけて人々が暮らし、特に1050年から1200年頃に最盛期を迎えたと考えられています。メキシコ以北では最大級の先史時代の都市遺跡であり、数多くの土塁(マウンド)が残されています。
世界遺産としての価値
登録基準
カホキア・マウンド州立史跡は、以下の基準を満たしたことが評価され、世界遺産に登録されました。
- 登録基準(iii): ミシシッピ文化という、消滅した文明の独特な証拠であることが評価されました。
- 登録基準(iv): 階層化された社会構造を反映した、マウンド群を中心とする古代の都市計画の優れた見本であることが評価されました。
歴史的・考古学的重要性
カホキアは、ミシシッピ文化における政治・宗教・経済の中心地でした。整然とした都市計画、巨大なマウンドの建設、広範囲にわたる交易ネットワークの存在は、当時の社会が高度に組織化されていたことを示しています。遺跡から出土する土器や石器、装飾品などは、彼らの生活様式や宗教観、文化を解明するための貴重な手がかりとなっています。
遺跡の概要
地理
カホキアは、イリノイ州セントルイス近郊の、ミシシッピ川が作る広大な氾濫原「アメリカン・ボトム」に位置しています。肥沃な土地と豊かな水資源に恵まれ、農耕を基盤とする大規模な集落の発展を支えました。
主要な遺構
この世界遺産の主要な遺構には、以下のものがあります。
- モンクス・マウンド (Monks Mound): 北米最大級の土塁で、高さ約30メートル、基底部は5ヘクタールを超えます。4層のテラス構造を持ち、頂上には首長の住居や神殿など、重要な建物があったと考えられています。
- グランド・プラザ (Grand Plaza): モンクス・マウンドの南に広がる約19ヘクタールの大広場。公共の儀式や集会、競技などが行われた場所と推測されています。
- ウッドヘンジ (Woodhenge): 天文観測に使われたとされる、巨大な木柱を円形に並べた施設。日の出の位置から夏至や冬至、春分・秋分を知るための太陽暦としての役割があったと考えられています。
- 防御柵 (Defensive Palisade): 都市の中心部を囲んでいた、全長約3.2キロメートルに及ぶ木製の柵。等間隔に見張り台も設けられ、防御的な役割を担っていました。
観光と保全
カホキア・マウンド州立史跡は、その壮大な景観と歴史的重要性から多くの観光客が訪れます。遺跡を後世に伝えるため、イリノイ州自然資源局などの関係機関によって、マウンドの侵食防止や発掘調査、遺物の管理といった継続的な保全活動が行われています。
これらの貴重な遺産を守り、その価値を伝えていくためには、持続可能な観光と保全活動の両立が不可欠です。カホキアを訪れることは、先住アメリカ人の高度な文明を学び、人類の歴史の多様性を理解する貴重な機会となるでしょう。