エネディ山地:自然および文化的景観とは
エネディ山地は、チャド北東部のサハラ砂漠に位置する広大な砂岩台地で、2016年にユネスコの世界複合遺産に登録されました。長年にわたる風と水の浸食によって形成された奇岩、天然アーチ、深い峡谷が広がり、壮大な自然景観を生み出しています。また、この地には数千年以上にわたる人類の営みの痕跡が、数多くの岩絵として残されています。
自然と文化が織りなす景観
エネディ山地の価値は、その壮大な自然と豊かな文化が一体となっている点にあります。
- 自然美と生態系: 砂漠の中に孤立した台地は「水の城」とも呼ばれ、恒久的な水源(ゲルタ)が存在します。これにより、サハラでは珍しいワニや多様な動植物が生息する独自の生態系が育まれています。風食によって生まれたアロイア・アーチなどの地形は、世界屈指の自然美を誇ります。
- 文化的価値: 台地の崖や洞窟には、500以上の場所に数千点もの岩絵(ペトログリフ)が残されています。これらは、かつてこの地が緑豊かだった時代から現代に至るまでの、人々の生活、信仰、そして環境の変化を記録した貴重な文化遺産です。
世界遺産登録基準
- (iii) この地に残された膨大な数の岩絵は、サハラ地域における人類の文化的な伝統や文明の変遷を物語る、他に類を見ない証拠です。
- (vii) 浸食によって生み出された断崖、峡谷、天然アーチが織りなす景観は、世界的に見ても傑出した自然美を誇ります。
- (ix) 砂漠の中に孤立した地形と恒久的な水源が、独特の生態系と生物種の進化の過程を示す顕著な見本となっています。