アレッポの旧市街の概要
アレッポはシリア北部の主要都市であり、ダマスカスと並ぶ世界最古の都市の一つです。紀元前2000年頃から歴史に登場し、ヒッタイト、アッシリア、ローマ、イスラムなど様々な文明の支配下で、交易の中心地として繁栄しました。旧市街は丘の上にそびえる城塞(シタデル)を中心に発展し、城壁に囲まれた内部には大規模なスーク(市場)、モスク、隊商宿(ハーン)、神学校(マドラサ)などが迷路のように広がっています。この独特の都市構造と歴史的価値が評価され、1986年に世界文化遺産に登録されました。
主な歴史的建造物
旧市街は、中世アラブ都市の面影を色濃く残しています。
- アレッポ城(シタデル): 旧市街の中心に位置する巨大な城塞。現在の形は12世紀から13世紀のアイユーブ朝時代に築かれました。
- ウマイヤド・モスク: 8世紀に創建され、11世紀に再建されたアレッポ最大のモスク。美しいミナレット(光塔)で知られていましたが、内戦で破壊されました。
- アル=マディーナ・スーク: 中東で最大級の規模を誇る屋根付き市場。総延長13kmにも及び、様々な商店が軒を連ねていました。
- 隊商宿(ハーン): 交易商人たちのための宿泊・取引施設。旧市街には多くのハーンが残されています。
世界遺産登録基準
- (iii) 古代から続く商業都市の文化的伝統を伝える、他に類を見ない物的な証拠である。
- (iv) イスラム時代の軍事、宗教、市民建築の発展段階を示す顕著な見本である。
保全状況
2011年から続くシリア内戦で、アレッポ旧市街は最も激しい戦闘の舞台の一つとなりました。ウマイヤド・モスクのミナレットの倒壊や、アル=マディーナ・スークの大規模な火災など、遺産の60%以上が深刻な被害を受けたと報告されています。2013年に危機遺産リストに登録され、現在は瓦礫の撤去や復興に向けた取り組みが始まっています。
| 遺跡 | 特徴 |
|---|---|
| アレッポ城(シタデル) | 旧市街を見下ろす丘に建つ巨大な中世の要塞。 |
| ウマイヤド・モスク | アレッポ最大のモスク。セルジューク朝時代のミナレットは傑作とされた(倒壊)。 |
| アル=マディーナ・スーク | 中東最大級の屋根付き市場(甚大な被害)。 |
| 隊商宿(ハーン) | シルクロードの交易を支えた宿泊・商業施設。 |