サウジアラビアのハイール地方のロック・アートとは
サウジアラビア北部のハイール地方に点在する岩絵群は、2015年に世界文化遺産に登録されました。この遺産は、約1万年にもわたる人間の生活、信仰、そして周辺環境の変遷を記録した、砂漠地帯の巨大な「歴史書」ともいえるものです。
特に、ジュッバのウンム・シンマン山と、そこから南へ約250km離れたシュウェイミスのアル=マンジュール山とラート山に残る彫刻群が評価されています。これらは、かつてこの地が緑豊かなサバンナであった時代から、砂漠化が進んだ時代までの人々の営みを描き出しています。
登録基準
- 登録基準 (i): 人類の創造的才能の傑作を証明するもの。
- 登録基準 (iii): 現存する、または消滅した文化的伝統または文明の、唯一の、または少なくとも稀な証拠。
遺産の価値
ハイール地方のロック・アートの価値は、その芸術的な質の高さと、長期間にわたる人類史の記録としての重要性にあります。人や動物(ウシ、ライオン、ラクダなど)の姿、狩りの様子、そして後代になると文字などが描かれており、気候変動に伴う生活様式の変化を視覚的に理解できる貴重な資料です。
遺産の概要
地理と環境
ネフド砂漠の中に位置し、古代には湖や川が存在していました。岩絵が描かれた砂岩の露頭は、かつての水源の近くにあります。
主要なロック・アートサイト
登録されている2つの主要なサイトは、異なる時代の特徴を示しています。
ロック・アートサイト | 特徴 |
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ジュッバのウンム・シンマン山 | 新石器時代の大規模なウシの彫刻や人物像が多数見られる。 |
シュウェイミスのアル=マンジュール山とラート山 | ジュッバより古い時代のものとみられ、より写実的な動物の姿が描かれている。 |
観光と保全
これらのサイトは保護地域として管理されており、風化や破壊行為から岩絵を守るための取り組みが行われています。訪問者はガイド付きツアーに参加することで、この貴重な遺産を間近に見ることができます。サウジアラビアの先史時代を学ぶ上で非常に重要な場所です。