タムガリの考古的景観にある岩絵群とは
タムガリの考古的景観にある岩絵群は、カザフスタン南東部のタムガリ渓谷に広がる、約5,000点に及ぶ岩絵(ペトログリフ)のコレクションです。2004年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。これらの岩絵は、紀元前2千年紀の青銅器時代から20世紀初頭まで、3,000年以上にわたって描かれ続けたもので、中央アジアの遊牧民の生活、社会、信仰の変遷を物語る貴重な記録です。
登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたと見なされ、世界遺産に登録されました。
- (iii) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
遺産の価値と特徴
考古学的・文化的価値
タムガリの岩絵群は、中央アジアにおける先史時代から近世に至るまでの人々の精神世界と生活様式を視覚的に伝える、類まれな証拠です。特に青銅器時代に描かれたものは、祭儀や神話に関連するものが多く、当時の人々の宇宙観や信仰を知る上で非常に重要です。また、時代が下るにつれて、遊牧民の生活や動物たちの姿がより写実的に描かれるようになり、社会の変化を読み取ることができます。
主要な岩絵のモチーフ
岩絵には多種多様なモチーフが見られますが、特に以下のようなものが特徴的です。
- 太陽神:光輪を背負ったように見える人物像。タムガリを象徴する岩絵で、古代の信仰対象であったと考えられています。
- 動物:馬、牛、鹿、狼、猪など、当時の生態系や遊牧生活に重要だった動物が数多く描かれています。
- 人物と祭儀:踊る人物、狩りをする人々、シャーマンのような祭司など、共同体の儀式の様子を描いたとされる場面があります。
- 乗り物:青銅器時代の二輪馬車(チャリオット)の絵は、当時の技術や社会構造を知る手がかりとなります。
地理と景観
タムガリ渓谷は、乾燥したステップ地帯にありながら、岩陰や水源に恵まれているため、古くから人々が集う神聖な場所でした。岩絵が描かれた岩壁だけでなく、古代の住居跡や祭壇、墓地なども発見されており、景観全体が考古学的に重要な意味を持っています。
参考文献
「タムガリの考古的景観にある岩絵群」. UNESCO World Heritage Centre. https://whc.unesco.org/ja/list/1145