D.F.ヴァウダ蒸気水揚げポンプ場とは
D.F.ヴァウダ蒸気水揚げポンプ場は、オランダ北部フリースラント州にある、世界最大の蒸気動力式ポンプ場です。1920年に完成し、現在もなお緊急時に稼働可能な状態で維持されています。1998年に世界文化遺産に登録されました。この施設は、オランダの長年にわたる水との闘いの歴史において、蒸気機関を用いた排水技術が到達した頂点を示す記念碑的な建造物です。レンガ造りの美しい建築と、巨大な蒸気エンジンやポンプが持つ圧倒的な機械美が融合した、産業遺産として極めて高い価値を持っています。
世界遺産の登録基準
- 登録基準(i): D.F.ヴァウダ技師の設計によるこのポンプ場は、蒸気機関のパワーを水管理に応用した、機能性と造形美を兼ね備えた人間の創造的天才の傑作である。
- 登録基準(ii): オランダの水管理技術の発展において、風車から蒸気、そして電気・ディーゼルへと移行する重要な段階を示している。
- 登録基準(iv): 20世紀初頭の水利工学の最高水準を示す、技術的・建築的に傑出した建造物である。
遺産の価値と概要
このポンプ場の価値は、フリースラント州の広大な土地を洪水から守るという実用的な機能と、そのための技術とデザインが見事に調和している点にあります。建築家D.F.ヴァウダによって設計された建物は、表現主義的なレンガ使いが特徴のアムステルダム派の様式で建てられており、単なる工場ではなく芸術作品のような風格を備えています。内部には、4基の巨大な蒸気エンジンと、それによって駆動する8基の遠心式ポンプが設置されており、フル稼働時には1分間に約4000立方メートル(オリンピックプール1.5杯分以上)の水をアイセル湖へ排出する能力を持ちます。ディーゼルや電力によるポンプが主流となった現代において、蒸気時代の技術の集大成を動態保存している点で、他に類を見ない貴重な遺産です。
施設の主な構成
| 施設 | 特徴 |
|---|---|
| 機械室(エンジンホール) | 4基のタンデム複式蒸気エンジンと8基の遠心式ポンプが整然と並ぶ、壮麗な空間。 |
| ボイラー室 | エンジンを動かすための高圧蒸気を生成する場所。 |
| 煙突 | 高さ60メートルのレンガ造りの煙突。ポンプ場の象徴。 |
| 取水口・排水口 | フリースラントの内水を取り込み、アイセル湖へ排出するための水路。 |