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オランダの水利防塞線群

オランダの水利防塞線群とは

オランダの水利防塞線群は、国土の大部分が海面より低いという地理的特徴を巧みに利用した、世界でも類を見ない大規模な防衛システムです。1996年に「アムステルダムの防塞線」として登録された後、2021年に「新オランダ洪水線」を含むより広範な防衛網が追加され、現在の名称で拡大登録されました。このシステムは、堤防、水門、要塞、運河などを組み合わせ、意図的に広範囲の土地を浸水させる(冠水させる)ことで、敵軍の侵攻を阻止するものです。

世界遺産の登録基準

  • 登録基準(ii): 水利工学と防衛技術を融合させた要塞構築の理念において、19世紀後半のヨーロッパで重要な影響を与えた。
  • 登録基準(iv): 水を制御するオランダの卓越した技術を軍事目的に応用した、要塞システムの完璧な実例である。
  • 登録基準(v): この防衛線は、オランダ特有の自然環境と人間の相互作用によって生まれた、他に類を見ない文化的景観である。

遺産の価値と概要

この遺産の最大の価値は、水を「敵」ではなく「味方」として利用する、その独創的な防衛思想にあります。敵の侵攻が予測されると、水門を開放し、運河や河川から水を導入。歩兵は進めず、船も使えない深さ(約40〜50cm)に土地を冠水させ、広大な「水の壁」を創り出しました。この冠水地帯の背後には、堤防や道路などの弱点を守るために多数の要塞が戦略的に配置されました。1815年から1940年までオランダの国土防衛の要として機能し、水と共に生きてきたこの国の歴史と技術力の象徴となっています。

主な構成要素

要素 役割
要塞・砲台 堤防や水門など、冠水させられない戦略的拠点の防衛。
堤防・土手 冠水させるエリアを制御し、水を保持する。
水門・堰 水の取水と排水をコントロールする重要な施設。
運河・河川 冠水させるための水を供給する水路網。
冠水区域 意図的に浸水させ、敵の進軍を妨げる広大な土地。

オランダの水利防塞線群の基本情報

                         
国名 オランダ王国
世界遺産の名称 オランダの水利防塞線群
遺産の種類 文化遺産
登録年 1996
拡張・範囲変更 2021
危機遺産
危機遺産登録期間
登録基準 (ⅱ)(ⅳ)(ⅴ)
備考 名称変更につき、登録し直し
範囲(ヘクタール)55404.9
地図

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