シミエン国立公園とは
シミエン国立公園は、エチオピア北部の高原地帯に位置する、壮大な自然景観と希少な固有種で知られる国立公園です。「アフリカの屋根」とも呼ばれるこの地域は、長年の侵食によって形成された断崖絶壁、深い渓谷、そして鋭い峰々が連なるドラマチックな地形が特徴です。1978年、ユネスコの世界自然遺産の最初の12件の一つとして登録されました。
遺産の価値と登録基準
シミエン国立公園の価値は、その圧倒的な自然美と、地球上でここにしか生息しない多くの動植物を含む、世界的に重要な生物多様性にあります。
- 登録基準(vii):巨大な断崖や渓谷が織りなす風景は、他に類を見ないほどの自然美と雄大さを誇ります。
- 登録基準(x):ワリアアイベックス、ゲラダヒヒ、エチオピアウルフなど、絶滅の危機に瀕する固有種にとって最後の生息地であり、生物多様性の保全上、極めて重要な場所です。
独自の生態系
標高1,900mからエチオピア最高峰のラス・ダシェン山(4,550m)に至る標高差が、多様な植生と生態系を生み出しています。
| 固有種 | 特徴 |
|---|---|
| ワリアアイベックス | ヤギ科の動物で、シミエン山地にのみ生息する絶滅危惧種。断崖絶壁を巧みに移動する。 |
| ゲラダヒヒ | 胸にある赤い皮膚が特徴的な霊長類。「草を食べるサル」として知られ、大集団で生活する。 |
| エチオピアウルフ | 世界で最も希少なイヌ科の動物。高地に生息し、ネズミなどの小型哺乳類を捕食する。 |
| オオハシカッコウ | 巨大なクチバシを持つ特徴的な鳥類。高山帯のジャイアントロベリアの森などで見られる。 |
保全への取り組み
かつては内戦や農地拡大、密猟などにより生態系が脅かされ、1996年から2017年まで「危機にさらされている世界遺産(危機遺産)」リストに記載されていました。しかし、エチオピア政府と国際社会の協力による保護活動が実を結び、個体数が回復したことなどから危機遺産リストから解除されました。持続可能な観光と地域社会との連携が、今後の保全の鍵となります。
参考文献
「シミエン国立公園」.UNESCO. https://whc.unesco.org/ja/list/9