クエンカのサンタ・アナ・デ・ロス・リオス歴史地区とは
エクアドル南部、アンデス山中の標高約2,500mに位置するクエンカは、「4つの川のサンタ・アナ」という正式名称が示す通り、4本の川が流れる美しい古都です。1557年にスペイン人によって建設され、その市街地はスペイン国王の勅令に基づく厳格なルネサンス期の都市計画に沿って整備されました。碁盤の目状に区画された街路、美しいコロニアル様式の建物、そして荘厳な教会群が調和した景観は、ラテンアメリカにおける計画的植民都市の優れた典型例として、1999年に世界文化遺産に登録されました。
世界遺産登録基準
- (ii) 16世紀のルネサンス期の都市計画理念がアメリカ大陸で適用され、現地の文化や地形と融合して独自の発展を遂げたことを示しています。
- (iv) 植民地時代の都市計画と、それに続く共和制時代までの建築様式の変遷が、非常に良好な状態で保存されています。
- (v) 周囲の自然環境、特に川との関係を考慮して築かれた都市構造は、伝統的な土地利用の顕著な例です。
遺産の価値
ルネサンス期の都市計画
クエンカの歴史地区の最大の価値は、16世紀にスペインで理想とされた、整然とした格子状の街区を持つ計画都市の姿を今に伝えている点です。中央広場を中心に教会や行政機関が配置され、街路が直角に交差するレイアウトは、植民都市建設の思想を明確に示しています。
文化の融合と建築美
レンガ造りの建物、鉄製のバルコニー、そして美しい中庭(パティオ)を持つコロニアル建築が街並みを彩ります。特に、青いドームが印象的な新大聖堂(カテドラル・ヌエバ)は、ロマネスク、ゴシック、ルネサンスなど様々な様式が融合したクエンカの象徴です。また、パナマ帽(トキヤ草の帽子)の産地としても知られ、伝統工芸が今も息づいています。
主な見どころ
歴史地区の中心であるカルデロン公園には、新旧二つの大聖堂が向かい合って建っています。公園の周りには歴史的な建物が並び、市民や観光客の憩いの場となっています。また、川沿いの散策もクエンカの魅力の一つです。
| 建造物 | 特徴 |
|---|---|
| 無原罪の御宿り大聖堂(新大聖堂) | 3つの青いドームが特徴の、クエンカのシンボル。19世紀末から約90年かけて建設。 |
| エル・サグラリオ教会(旧大聖堂) | 1557年の都市建設当初からある、クエンカ最古の教会。現在は宗教美術館。 |
| カルデロン公園 | 歴史地区の中心に位置する広場。新旧大聖堂や市庁舎に囲まれている。 |
| 花の広場 | カルメン・デ・ラ・アスンシオン教会の隣にある、常に花で彩られる美しい広場。 |
観光と保全
その落ち着いた雰囲気と美しい街並みから、エクアドルで最も美しい都市と称され、多くの観光客が訪れます。市は歴史的景観を維持するため、建物の高さや外観に関する厳しい規制を設けており、住民と行政が一体となった保全活動が行われています。