概要
「アッシジのサン・フランチェスコ聖堂と関連建造物群」は、イタリア中部のウンブリア州にある世界遺産です。清貧を説いたキリスト教の聖人、フランチェスコの功績を称えて13世紀に建設されたサン・フランチェスコ聖堂を中心とする、フランシスコ会関連の史跡群が対象となっています。この遺産は、中世イタリアの宗教、芸術、建築の発展において極めて重要な役割を果たしました。
歴史と宗教的重要性
1226年に亡くなった聖フランチェスコの遺骸を安置するため、1228年に教皇グレゴリウス9世の命で聖堂の建設が始まりました。聖堂は上下二層構造になっており、下層聖堂には聖フランチェスコの墓所があります。アッシジはフランシスコ会の母体となった場所であり、サン・フランチェスコ聖堂はカトリック教会における重要な巡礼地の一つとして、今日まで世界中から多くの信者や観光客が訪れます。
芸術と建築の価値
サン・フランチェスコ聖堂は、ロマネスク様式とイタリア・ゴシック様式が融合した建築の傑作です。特に、聖堂の壁面を飾るフレスコ画は西洋美術史における画期的な作品群として知られています。
- 上層聖堂: 明るく荘厳なゴシック様式の空間。壁面には、ジョットとその工房による聖フランチェスコの生涯を描いた28場面の連作フレスコ画があり、人物の感情や空間の奥行きを表現する新しい画風は、ルネサンス絵画の先駆けとなりました。
- 下層聖堂: ロマネスク様式の重厚な空間。チマブーエ、シモーネ・マルティーニ、ピエトロ・ロレンツェッティなど、当代一流の画家によるフレスコ画で埋め尽くされています。
世界遺産登録と登録基準
アッシジの宗教的・歴史的重要性、そして西洋美術の発展に大きく貢献した芸術作品群が評価され、2000年に世界文化遺産に登録されました。登録基準は以下の通りです。
- (i) 人類の創造的才能を表現する傑作。
- (ii) 芸術と建築の発展に重要な影響を与えた。
- (iii) フランシスコ会の文化的伝統を伝える他に類を見ない証拠。
- (iv) 中世ヨーロッパの宗教的・芸術的発展を象徴する顕著な見本。
- (vi) 普遍的なメッセージを持つ聖フランチェスコの思想と深く関連している。
| 建築物 | 特徴 |
|---|---|
| サン・フランチェスコ聖堂(上層) | ゴシック様式。ジョットによる聖フランチェスコの生涯を描いたフレスコ画が有名。 |
| サン・フランチェスコ聖堂(下層) | ロマネスク様式。チマブーエなどによる荘厳なフレスコ画。聖人の墓所がある。 |
| サクロ・コンヴェント(修道院) | 聖堂に隣接するフランシスコ会の修道院。 |