概要
「ヴィチェンツァ市街とヴェネト地方のパッラーディオ様式の別荘群」は、イタリア北東部ヴェネト州に位置する世界遺産です。1994年にヴィチェンツァ市街が、1996年に周辺の別荘群が追加登録されました。この遺産は、ルネサンス後期の最も影響力のある建築家の一人、アンドレア・パッラーディオ(1508-1580)が設計した建築群で構成されています。彼は古代ローマ建築を研究し、均整のとれた比率や調和を重んじる独自の「パッラーディオ様式」を確立。その様式は、イギリスやアメリカをはじめとする世界各国の建築に多大な影響を与えました。
主な見どころ
ヴィチェンツァ市街
- バシリカ・パッラーディアーナ:パッラーディオの出世作。既存のゴシック様式の建物の外側を、セルリアーナ(アーチと柱を組み合わせた窓)を用いた二層のロッジアで覆った傑作です。
- テアトロ・オリンピコ:パッラーディオの最後の作品で、世界最古の現存する屋内劇場。古代ローマ劇場を模しており、舞台の背景には遠近法を用いた街並みの書き割りがあります。
- キエリカーティ宮殿:現在は市立絵画館として利用されている宮殿。壮大な柱廊が特徴的です。
ヴェネト地方の別荘群
- ヴィラ・カプラ「ラ・ロトンダ」:パッラーディオの別荘建築の最高傑作。正方形の建物の四方に同じファサードを持つ完全なシンメトリー構造で、その後の建築に大きな影響を与えました。
世界遺産登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたと見なされ、世界遺産に登録されました。
- (i) ヴィチェンツァの建築群、特にアンドレア・パッラーディオの作品は、建築史において他に類を見ない芸術的成果である。
- (ii) パッラーディオの作品は、その建築規則の出版を通じて、過去3世紀にわたりヨーロッパ、北米、そして世界の建築言語に決定的な影響を与えた。