シャキの歴史地区とハーンの宮殿とは
「シャキの歴史地区とハーンの宮殿」は、アゼルバイジャン北西部の都市シャキにある歴史的なエリアで、2019年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。シャキは、古くから絹織物の生産と交易で栄え、シルクロードの重要な中継地でした。特に18世紀から19世紀にかけての豊かな商家や、シャキ・ハーン国の夏の離宮であった「ハーンの宮殿」が、当時の繁栄を今に伝えています。
登録基準
この遺産は、以下の基準を満たしたことが評価されました。
- 登録基準(ii):建築や技術、記念碑、都市計画、景観デザインの発展において、ある期間または文化圏における価値観の重要な交流を示すもの。サファヴィー朝、オスマン帝国、ロシアなど多様な文化の影響を受けつつ、独自の建築様式を発展させました。
- 登録基準(v):人類の歴史における伝統的な集落や土地利用の顕著な見本。山からの土石流を避ける都市計画や、地域の気候風土に適した建築様式が評価されました。
遺産の価値
この遺産の価値は、シルクロード交易がもたらした富を背景に花開いた、独創的な建築文化と都市景観にあります。
- 建築様式:ハーンの宮殿は、釘を一切使わずに木枠を組み上げた色鮮やかなステンドグラス「シェベケ」で有名です。壁面には、戦闘や狩りの様子を描いた豪華なフレスコ画が施されています。
- 都市景観:裕福な商人が建てた煉瓦造りの家々が並び、伝統的なキャラバンサライ(隊商宿)も残っています。これらは、絹交易で繁栄した都市の歴史を物語っています。
遺産の概要
シャキは、大コーカサス山脈の南麓に位置し、豊かな自然に囲まれています。18世紀の洪水で壊滅的な被害を受けた後、現在の場所に移転・再建された歴史を持ちます。その際に、防災を考慮した都市計画がなされました。
| 主要な建造物 | 特徴 |
|---|---|
| ハーンの宮殿 | 18世紀末に建設。釘を使わないステンドグラス「シェベケ」と壁画が特徴の傑作建築。 |
| キャラバンサライ | シルクロードの商人たちのための宿泊・交易施設。現在もホテルとして利用されているものもある。 |
| 歴史地区の家屋 | 地域の伝統的な建築様式を示す商家や住居群。切妻屋根や装飾的な窓枠が特徴。 |
シャキの歴史地区は、東西文化交流の歴史と、地域の職人技術が生み出した美しい建築遺産が融合した貴重な場所です。
参考文献
- UNESCO World Heritage Centre. “Historic Centre of Sheki with the Khan’s Palace”. https://whc.unesco.org/en/list/1549