「インド洋のガラパゴス」と呼ばれる独特の生態系
ソコトラ諸島は、インド洋の北西に位置するイエメン共和国の領土です。大陸から長期間隔絶された地理的条件により、極めてユニークな生態系が育まれたことから「インド洋のガラパゴス」と称され、2008年にユネスコの世界自然遺産に登録されました。諸島は、最大のソコトラ島をはじめ、アブドゥルクーリー島、サムハ島、ダルサ島の4つの主要な島と、いくつかの小島で構成されています。
世界遺産登録基準
ソコトラ諸島は、その顕著な生物多様性が評価され、以下の登録基準を満たして世界遺産リストに記載されました。
- 登録基準 (x): 生物多様性の保全上、最も重要な自然生息地を包含する地域。特に、地球規模で普遍的な価値を持つ絶滅危惧種の生息地として顕著であること。
ソコトラ諸島に生息する植物種の37%、爬虫類種の90%、陸生巻貝種の95%が、世界の他の場所では見られない固有種であるとされています。
遺産の価値を支える固有種
奇妙な形の植物たち
ソコトラの景観を最も特徴づけるのが、傘を広げたような独特の樹形を持つ「竜血樹(ドラゴンツリー)」です。その樹皮から出る赤い樹脂が「竜の血」に例えられたことが名前の由来です。また、幹が徳利のように膨らんだ「ボトルツリー(アデニウム・ソコトラナム)」や、薬用として知られる固有種の「アロエ・ペリーレイ」など、乾燥した気候に適応した珍しい植物が数多く自生しています。
独自の進化を遂げた動物たち
島には大型の哺乳類は生息していませんが、鳥類や爬虫類、昆虫類において高い固有性を誇ります。ソコトラムクドリやソコトラハタオリなど、島の名を冠した固有の鳥類が10種以上確認されています。また、爬虫類やカタツムリのほとんどが固有種であり、閉鎖された環境で独自の進化を遂げてきました。
地理と保全活動
地理と気候
ソコトラ諸島はアラビア海に位置し、モンスーンの影響を強く受ける乾燥した熱帯気候です。年間降水量は少ないものの、山岳地帯では霧が発生し、植物にとって貴重な水分源となっています。
観光と保全
その貴重な自然は、気候変動や外来種の侵入といった脅威に直面しています。そのため、エコツーリズムを推進し、環境への影響を最小限に抑えながら島の自然を守る取り組みが行われています。訪問者には、この脆弱な生態系を尊重し、保護に協力することが求められます。
ソコトラ諸島の主要な固有種の例
| 分類 | 主な固有種 |
|---|---|
| 植物 | 竜血樹(ドラゴンツリー)、ボトルツリー、アロE・ペリーレイ、ソコトラ・バルサム |
| 動物 | ソコトラムクドリなどの鳥類、固有の爬虫類、陸生巻貝類 |