概要
タドラールト・アカークスは、リビア南西部のサハラ砂漠に広がる山塊地帯にある岩面画(ロック・アート)群です。紀元前12,000年から紀元100年頃まで、約1万2000年という長期間にわたって描かれた数千点もの彫刻画や彩色画が残されています。これらの岩面画は、かつて緑豊かだったサハラの自然環境の変化や、そこに生きた人々の生活様式の移り変わりを記録した貴重な歴史的資料であり、1985年に世界文化遺産に登録されました。
世界遺産登録基準
タドラールト・アカークスの岩面画は、以下の基準を満たしたことが評価されています。
- (iii) サハラ地域の環境変遷と、それに適応した人類の文化的・社会的発展を物語る、他に類を見ない証拠です。
岩面画が示すサハラの変遷
岩面画の主題は年代によって変化し、サハラ砂漠の気候変動と人々の暮らしの移り変わりを雄弁に物語っています。
| 時代区分(主題) | 特徴 |
|---|---|
| 水牛期(紀元前1万年頃~) | 大型の野生動物(水牛、象、キリンなど)が描かれ、当時のサバンナ環境を示す。 |
| 牛牧期(紀元前4000年頃~) | 家畜である牛の群れや牧畜生活の様子が中心となる。社会の形成が見られる。 |
| 馬期(紀元前1500年頃~) | 馬に引かれた戦車などが登場し、より複雑な社会構造や外部との交流を示す。 |
| ラクダ期(紀元前数世紀~) | 砂漠化が進行し、乾燥地帯に適応したラクダが主要なモチーフとなる。 |