世界遺産委員会とは、世界遺産の登録や保全状況について議論するためのユネスコ(UNESCO)の委員会です。
この記事では、世界遺産委員会の役割や議題について解説します。
世界遺産委員会とは
世界遺産委員会は、1976年の世界遺産条約締約国会議において設立されました。正式名称は「顕著な普遍的価値を有する文化遺産及び自然遺産の保護のための政府間員会」です。
締約国から選出された21カ国で構成されています。
通常1年に1度開催される会議には、ICCROMとICOMOS、IUCNの代表が1人ずつ顧問として参加し、他には締約国の要請によって同様の目的を有する政府間機関やNGOの代表なども顧問として参加することができます。
世界遺産委員会の構成国(委員国)
締約国のなかから21カ国で構成されますが、構成国に地域的な偏りが起きないように地域区分と最低限の選出枠が定められています。これにより、例えば締約国にヨーロッパの国が多くなりすぎることを防いでいます。地域的な偏りが生じるとその分発言権が強くなり、特定の地域の世界遺産のみが優遇されてしまうおそれがあるため、そういったリスクをなくすための取り決めです。
地域区分と最低選出枠は下記のようになっています。
グループ | 地域区分 | 最低選出枠(国数) |
---|---|---|
グループⅠ | 西ヨーロッパ・北アメリカ | 2 |
グループⅡ | 東ヨーロッパ | 2 |
グループⅢ | ラテンアメリカ・カリブ海 | 2 |
グループⅣ | アジア・太平洋 | 3 |
グループⅤ(a) | アフリカ | 4 |
グループⅤ(b) | アラブ諸国 | 2 |
世界遺産委員会構成国(委員国)の任期
世界遺産委員会の委員国の任期は6年と定められていますが、自発的に4年で任期を終えることや再選を自粛することが望ましいとされています。
これは、締約国になることが自国の世界遺産についてのアピールに繋がることなども踏まえ、より多くの国に委員国を務めてもらうことが望ましいという考えからです。
日本は、平成5年(1993)から平成11年(1999)、平成15年(2003)から平成19年(2007)、平成23年(2011)から平成27年(2015)まで委員国を務めていました。
また、2022年から2026年の4年間は4度目の委員国になっています。
世界遺産委員会の議題
世界遺産委員会では、主に下記の議題について議論がなされます。
- 世界遺産リストへの登録推薦書が提出された遺産の審議
- 危機遺産リストへの遺産登録や解除の決定
- 世界遺産リスト登録遺産の保全状況のモニタリング及び報告書を通した調査
- 世界遺産基金の使途の決定
- 作業指針の改定及び採択
- 2年ごとの世界遺産条約締約国会議とユネスコ総会への活動報告書提出
- 国際的援助の要請の審査 など
世界遺産リストへの登録推薦決議
世界遺産委員会では、世界遺産リストへ登録推薦された遺産に対して「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」の4段階で決議が行われます。
- 登録:顕著な普遍的価値があるとして世界遺産リストへの登録を認める決議
- 情報照会:世界遺産委員会が追加情報を求める決議。次回の世界遺産委員会に推薦書を再提出し、審査を受けることが可能。3年以内に再提出がない場合、それ以降は新たな登録推薦と見なされる。
- 登録延期:より綿密に評価・調査を行う必要がある、もしくは推薦書の本質的な改定が必要とされる決議。この場合推薦書の再提出から1年半の審議に付される。
- 不登録:世界遺産リストへの登録はふさわしくないと判断された場合の決議。例外的な場合を除いて再推薦自体が認められない。
不登録となった場合に例外的に再推薦が認められるケースとしては、新たな科学的情報が得られた場合や、別の登録基準によって推薦書を作成し直した場合などを指します。
世界遺産委員会とビューロー会議
世界遺産委員会は議長国1カ国、副議長国5カ国、書記国1カ国の7カ国で構成される任期1年のビューロー会議を設置します。
ビューロー会議は世界遺産員会の進行や作業日程の決定を行い、世界遺産委員会の最終日に次回の世界遺産員会のビューロー会議構成国が決定されます。