この記事では、世界文化遺産の登録基準や登録の流れについて解説しています。
世界自然遺産、世界複合遺産について知りたい方は下記の記事をご覧ください。
世界文化遺産とは
人類の歴史が生み出した記念物や建造物群、文化的景観などで、10個ある世界遺産の登録基準のうち、(ⅰ)~(ⅵ)のいずれか一つ以上を満たしている遺産が文化遺産となります。
記念物、建造物群、文化的景観について、世界遺産条約1章第1条では以下のように定義されています。
記念物
建築物、記念的意義を有する彫刻及び絵画、考古学的な性質の物件及び構造物、金石文、洞窟住居ならびにこれらの物件の組み合わせで、歴史上、芸術上または学術上、顕著な普遍的価値を有するもの。
建造物群
独立または連続した建造物の群であって、その建築様式、均質性または景観内の位置のために、歴史上、芸術上または学術上、顕著な普遍的価値を有するもの。
文化的景観
人工の所産(自然と人間の共同作品を含む)及び考古学的遺跡を含む区域であって、歴史上、芸術上、民族学上または人類学上、顕著な普遍的価値を有するもの。
文化遺産の登録基準
文化遺産の登録基準は下記の6つです。
(ⅰ)人類の創造的資質を示す傑作。
(ⅱ)建築や技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展において、ある期間または世界の文化圏内での重要な価値観の交流を示すもの。
(ⅲ)現存する、あるいは消滅した文化的伝統または文明の存在に関する独特な証拠を伝えるもの。
(ⅳ)人類の歴史上において代表的な段階を示す、建築様式、建築技術または科学技術の総合体、もしくは景観の顕著な見本。
(ⅴ)ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落や土地・海上利用の顕著な見本。または、取り返しのつかない変化の影響により危機にさらされている、人類と環境との交流を示す顕著な見本。
(ⅵ)顕著な普遍的価値をもつ出来事もしくは生きた伝統、または思想、信仰、芸術的・文学的所産と、直接または実質的関連のあるもの。(この基準は、他の基準と合わせて用いられることが望ましい。)
文化遺産の登録基準すべてを満たす世界遺産
6つある文化遺産の登録基準をすべて満たす世界遺産は非常に少なく、2022年5月現在
- ヴェネツィアとその潟(イタリア)
- 敦煌の莫高窟(中国)
の2つのみです。
複合遺産も含めると、泰山(中国)も文化遺産の登録基準をすべて満たしています。泰山は登録基準(ⅰ)~(ⅶ)の7つを満たす複合遺産です。
文化遺産の世界遺産リストへの登録の流れ
上図のように、文化遺産の登録は途中までは自然遺産と同様の流れをたどります。
世界遺産条約締結後の登録の流れは下記です。
- 各国政府が自国内の暫定リストを作成・提出
- 暫定リストに記載された物件から要件が整ったものを推薦
- ユネスコ世界遺産センターが各国政府からの推薦書を受理
- 物件の現地考査を依頼
- ICOMOS(国際記念物遺跡会議)が調査
- 調査結果をユネスコ世界遺産センターに報告
- 世界遺産委員会にて候補地を審査し、世界遺産リストへの登録を決定
参考:ICOMOSとは