武力紛争の際の文化財の保護に関する条約(1954年ハーグ条約)とは、1954年にオランダのハーグでユネスコが採択した条約です。1956年に発効しました。
国際紛争や内戦、民族紛争などから文化財を守るための措置を定めた条約で、第二次世界大戦で文化財を守ることができなかった経験から作成されました。
第二次世界大戦の際、文化遺産の破壊行為のみならず、占領国が被占領国の文化遺産を強制的に買い取るなどの略奪行為も行われました。こうした反省にもとづいて、まずは1954年に「武力紛争の際の文化財保護議定書」(第一議定書)が作成されました。そして、1999年の「武力紛争の際の文化財保護第二議定書」(第二議定書)では、武力紛争時だけでなく平時においても文化遺産や美術館、図書館を保護することを義務付けています。
日本と1954年ハーグ条約
日本は1954年に条約に署名はしましたが、保護の対象となる文化遺産と軍事目標となる施設との間に距離を置かねばならないという規定によって京都や奈良の文化遺産が条約の保護下に置かれない可能性があったことや、憲法9条を掲げる日本が武力紛争の発生を前提とした条約への加盟をすることにさまざまな意見があったことから、長らく未批准となっていました。
第二議定書によって距離制限が撤廃されたことなどから、2007年9月に批准書を寄託して117番目の締約国となりました。
また、批准に伴って国内法として武力紛争の際の文化財の保護に関する法律が制定されました。
保護の対象
1954年ハーグ条約では、以下のようなものを保護することを義務付けています。
- 建築物、考古遺跡、芸術品などの文化遺産
- 美術館や図書館などの保管施設
- 宗教的な礼拝の対象(寺院・教会・神殿など)
さらに、条約では特に重要な文化遺産については国際的な管理下に置く制度も定めています。
文化遺産の管理を担当する「文化財管理監」は、締約国とその敵国の利益を代表する「利益保護国」の合意で選ばれ、文化遺産の識別のための特殊標章を付するなどの活動を行います。